近年、雑誌が休刊になったり、紙の販促物がデジタルに変わっていったり、紙メディアの減少傾向が目につきます。
デジタルメディアが持つ速報性、拡散力、ターゲティング精度、効果測定の容易さといったメリットは確かにあると思いますが、一方、デジタルが飽和状態にあるからこそ、紙メディアが持つ「物質性」「信頼性」「集中促進」「特別感」「保存性」といった特性が、相対的に価値を高めているようにも感じています。
例えば、紙メディアは手で触れることができ、物理的な存在感があります。
ページをめくる感覚、紙の質感など、五感を刺激する要素はデジタル情報にはない体験を提供します。この実体感が、情報の記憶定着を助けるという研究もあるようですが、デジタル情報が流れ去りやすいのに対し、手元に残る紙メディアは繰り返し目に触れる機会を作り、記憶に残りやすくなります。
そのため、情報過多のデジタル環境においてこそ、物理的な「モノ」として存在する紙メディアは、受け手に強い印象を与え記憶に残りやすく、ブランド認知やメッセージの浸透に効果的だと思っています。
また、普遍的とも言える信頼性と特別感も、紙メディアならではだと思います。
一般的に、紙メディア(特に書籍、雑誌、質の高いダイレクトメールなど)は、ウェブサイトやSNSの情報よりも信頼性が高いと感じられる傾向があります。
理由としては、制作にコストと手間がかかるため、「きちんと作られたもの」という印象を与えやすいからだと思います。
デジタルで誰もが情報発信できる時代だからこそ、厳選された情報が掲載される紙メディアは、ある種の権威性や特別感もともなっているため受け手に安心感を与えるのではないでしょうか。企業ブランディングや、高価格帯の商品・サービスの訴求においてとても有効だと思います。

紙メディアは情報への集中と深い理解が得られやすい
スマートフォンやPCで情報を見ると、通知や他の誘惑(別サイトへのリンク、SNSなど)が多く、集中が途切れがちではないでしょうか。
一方、紙メディアを読む際は、比較的他の情報から遮断され、内容に集中しやすい環境が作れます。この集中がより深い理解を促すといわれているようです。
複雑な情報や、じっくりと考えてほしいメッセージを伝える場合、紙メディアは読者の集中を促し、内容の理解度を高めるのに適しているのではないでしょうか。

デジタル疲れとオフライン体験への欲求もあるのでは?
常にデジタルデバイスに接続されている状態に疲れを感じ、「デジタルデトックス」を求める人も増えているようです。意図的にオフラインの時間を作りたいというニーズに対し、紙メディアは新鮮さもあり、最適な選択肢となるはずです。
特定のターゲット層へのリーチに有効
デジタルデバイスの利用頻度が低い高齢者層や、あるいは全く利用しない層も依然として存在します。また、特定の趣味やライフスタイルを持つコミュニティ、会員制度のある企業様では、専門誌や会報誌などの紙メディアが重要な情報源であり続けているのも事実です。
デジタルだけではリーチしきれない層へ確実に情報を届ける手段のひとつとして、紙メディアは依然として重要です。地域密着型のビジネスや、特定のターゲット層を持つ場合に有効だといえるでしょう。

保存性と永続性にも優れている紙メディア
デジタルデータは容易に削除されたり、ウェブサイトが閉鎖されたりする可能性がありますが、紙メディアは物理的に存在する限り残り続けます。気に入った雑誌や書籍、パンフレット、カタログなどを長期間保管する人も少なくありません。
長期的に参照される可能性のある情報(製品カタログ、記念誌など)や、コレクション性を重視する場合、紙メディアの保存性は大きなメリットとなります。

紙メディアの有効性についてのまとめ
デジタルメディアが持つ速報性、拡散力、ターゲティング精度、効果測定の容易さといったメリットは揺るぎませんが、紙メディアが持つ特性にも価値があります。
重要なのは、「デジタルだけ、紙だけ」という二者択一ではなく、それぞれのメディアの特性を理解し、目的やターゲット、伝えたいメッセージの内容に応じてデジタルと紙メディアの「メディアミックス」を考えるということではないでしょうか。
ちょっと懐かしい響きですが、いま再び有効な手段だと思っています。
(高橋)